スペシャルインタビュー
ドリアン助川さん②2022年1月17日
特別企画として、北斎や小布施にご縁のある方たちへのインタビューを不定期でご紹介しています。今回も、前回に引き続き、作家のドリアン助川さんにお話を聞きました。
僕は2000年から3年間ニューヨークに暮らしていたんですが、2001年9月11日に同時多発テロが起きたんです。
当時ツインタワーまで4キロ近く離れたマンハッタンに住んでいて、ニューヨークの大混乱を体験することになりました。ツインタワーは2週間くらい燃えていましたね。
そうなんです。そんな状況で、英語の先生をしながら短編小説を書いている友人のクレイグと会って、「ニューヨークがひどいことになったね」と話をしたんです。
そうです。そのクレイグが「今の僕の頭の中には、北斎の冨嶽三十六景しか頭にない」と言うんです。
クレイグは「北斎は、いろいろな場所から富士山を描いている。
ツインタワーはなくなってしまったけれど、僕のイメージの中にはニューヨークの様々なところから見たツインタワーの記憶がある。北斎になったつもりで、ツインタワーがありし頃の物語を書きたい」と言ったんです。僕はそれを聞いて「北斎がこんなところに現れた」と思いました。
それが、クレイグは口では言うんだけどなかなか書かなくて……(笑)、結局小説の方は完成しなかったんです。
それでずいぶん後になって、本の執筆の依頼があったとき、クレイグのことを思い出して、同時多発テロを経験したのに一言も書いていなかったので「今こそ自分が北斎になろう」と思ったんです。
そうなんです。それで、ニューヨークのいろいろなところから見たツインタワーをイメージしながら、物語を進めました。
※こちらのコンテンツは、メールマガジンの内容を再編集してお届けしております。
最終回は2月上旬に配信予定です。ぜひメールマガジンでもお楽しみください。
― 前回、著書「あなたという国」を書かれたきっかけが北斎だったと聞いて驚きました。「あなたという国」はニューヨークの同時多発テロで恋人を失う主人公のお話ですが、北斎とどう繋がっているのでしょうか?
僕は2000年から3年間ニューヨークに暮らしていたんですが、2001年9月11日に同時多発テロが起きたんです。
当時ツインタワーまで4キロ近く離れたマンハッタンに住んでいて、ニューヨークの大混乱を体験することになりました。ツインタワーは2週間くらい燃えていましたね。
― そんな大変な状況の中で滞在されていたんですね。
そうなんです。そんな状況で、英語の先生をしながら短編小説を書いている友人のクレイグと会って、「ニューヨークがひどいことになったね」と話をしたんです。
― クレイグは、前回のお話にも出てきた、北斎の大ファンだという友人の方ですね!
そうです。そのクレイグが「今の僕の頭の中には、北斎の冨嶽三十六景しか頭にない」と言うんです。
クレイグは「北斎は、いろいろな場所から富士山を描いている。
ツインタワーはなくなってしまったけれど、僕のイメージの中にはニューヨークの様々なところから見たツインタワーの記憶がある。北斎になったつもりで、ツインタワーがありし頃の物語を書きたい」と言ったんです。僕はそれを聞いて「北斎がこんなところに現れた」と思いました。
冨嶽三十六景 凱風快晴
― その後、その物語はどうなったんですか?
それが、クレイグは口では言うんだけどなかなか書かなくて……(笑)、結局小説の方は完成しなかったんです。
それでずいぶん後になって、本の執筆の依頼があったとき、クレイグのことを思い出して、同時多発テロを経験したのに一言も書いていなかったので「今こそ自分が北斎になろう」と思ったんです。
― そんな風に、「あなたという国」という小説と北斎が繋がっていたとは!
そうなんです。それで、ニューヨークのいろいろなところから見たツインタワーをイメージしながら、物語を進めました。
第3回に続く・・・
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最終回は2月上旬に配信予定です。ぜひメールマガジンでもお楽しみください。
<ドリアン助川さん profile>
作家・歌手。明治学院大学国際学部教授。ハンセン病問題を背景にした小説『あん』が13言語に翻訳されている。2017年、『あん』はフランスの「文庫本読書大賞」と「DOMYTIS文学賞」を受賞。2019年、『線量計と奥の細道』が「日本エッセイスト・クラブ賞」を受賞。
作家・歌手。明治学院大学国際学部教授。ハンセン病問題を背景にした小説『あん』が13言語に翻訳されている。2017年、『あん』はフランスの「文庫本読書大賞」と「DOMYTIS文学賞」を受賞。2019年、『線量計と奥の細道』が「日本エッセイスト・クラブ賞」を受賞。
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