既存の枠を飛び越え続けた 北斎の表現技法 | 信州小布施 北斎館

既存の枠を飛び越え続けた 北斎の表現技法2021年12月13日

 最近、新宿のビル街に3Dの巨大な猫が登場し、大きな話題になりました。街を歩く人が思わず足を止めてしまうほどの猫の立体感は、猫が箱枠の前に飛び出すように映し出された目の錯覚によって生まれています。

 この手法を積極的に挿絵に取り入れていたのが北斎です。
当時、挿絵は四角い枠(匡郭/きょうかく)の内側に描かれるのが一般的。しかし北斎は、あえて絵の一部を枠の前に描いて立体的に見えるよう工夫しました。

孝霊五年不二峰出現


 『富嶽百景』初編に描かれた「孝霊五年不二峰出現」は、琵琶湖のほとりに突如富士山が現れたという伝説を描いています。枠を飛び越えた富士山頂によって、その雄大さが立体的に表現されています。

 他にも北斎は様々な手法を駆使して、空間を表現しました。
北斎は、「すやり霞」という手法も積極的に作品に取り入れています。すやり霞とは、古来より大和絵に用いられた手法で、背景に描かれた雲や霞の表現のことです。西洋の遠近法とは違い、画面全体で遠近感を表現することから東洋の遠近法とも呼ばれています。

粂村竹籬


 琉球の風景を描いた琉球八景シリーズの一つ「粂村竹籬」では、絵の大部分が霞の中に隠れ、幻想的な雰囲気が表現されています。

 北斎館で開催中の企画展「北斎と不思議な空間」では、北斎が様々な表現技法を取り入れて描いた幻想的な作品をご紹介しています。常に既存の枠を飛び越えようと、新しい表現を追い求めた北斎の挑戦をぜひご覧ください。

「北斎と不思議な空間」
▼会期:2021年11月20日(土)~2022年1月16日(日)まで
▼開館時間:午前9時~午後5時(ご入館は午後4時30分まで)
(2022年1月1日は午前10時から午後3時まで)
▼入館料:大人1,000円、高校生500円、小中学生300円
▼休館日:2021/12/31

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