省略するからこそ、描かれる本質 企画展「略画 ―はずむ筆、おどる線―」開催2025年4月18日

 北斎は、70年に渡る長い画業の中で様々なジャンルに挑戦しました。50代以降の北斎が力を注いだものの一つが、絵を学ぶ人の手本となる「絵手本」です。その中でも『北斎漫画』は北斎の代表作として広く知られています。

北斎漫画

 この『北斎漫画』を制作する際、北斎がヒントにしたと言われている本があるのをご存知でしょうか？ 北斎と同時代の絵師である鍬形蕙斎の『略画式』という絵手本です。この序文には、略画とは「形によらず精神を写す、形をたくまず略せるを以て略画式と題す」と書かれています。この言葉から、蕙斎の略画はただ簡略な絵というだけでなく、細部をあえて省略しながらも対象の核心を描き出そうとしていたことがわかります。こうした精神は、北斎の描く絵にも通じるところがあります。

 さらに、北斎が手掛けた櫛やキセルの図案集『今様櫛きん雛形』にも、略画のデザインが紹介されています。この図案集は、当時の職人が実際に製品のデザインに使用していました。このことからも、あえて省略した形そのものが意匠的な魅力をもつと、江戸時代の人々に受け止められていたことがうかがえます。

『今様櫛きん雛形』

 北斎館所蔵の版本作品の中から略画で描かれた人物や動物、草花をご紹介する企画展「略画―はずむ筆、おどる線―」は明日より開催です。細部が省略されるからこそ、対象の本質が描き出される略画の魅力をぜひご覧ください。




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