【作品紹介】この秋、鮭がうまい!「椿と鮭の切り身」 | 信州小布施 北斎館

【作品紹介】この秋、鮭がうまい!「椿と鮭の切り身」2020年9月24日

ごぶさたしています。

学芸員Nです。

グッズのお話からやっと解放、作品をご紹介です。

 

今回お話するのは肉筆画「椿と鮭の切り身」です。

 

 

この作品、もともと当館で人気が高く、私もお気に入りの逸品です。

落款は「画狂老人卍」、印章は「かつしか」、「齢八十一」のサインから81歳、北斎晩年の作品とわかります。

深紅の切り身と淡い紅色の椿、この取り合わせがあまりにも突飛すぎて最初は驚いたものです。

でもしばらく眺めていると、不思議と悪くない組み合わせに見えてくるんです。

北斎は何にインスピレーションを感じてこのような絵を描いたのでしょう。

やっぱり食卓に鮭がでたからでしょうか?

過日、BSテレビ東京の番組「浮世絵FIVE」にて当館が紹介された際に、この作品を学芸員一押しとして紹介しました。

その影響からか、しばらくお問い合わせが続き、本作品を多くの方に知ってもらえてうれしい限りです。

今は収蔵庫に収めてお休みとしていますが、また機会があるときに展示したいです。

 

さて、今年はサンマが不漁ということで食卓に並びにくくなっています。

その代わり鮭が豊漁ということで、まさにこの作品にぴったりな状況です。

そんな鮭の絵でよく知られているのが洋画家 高橋由一の「鮭」で国の重要文化財に指定されています。

このような半身が切り取られた鮭、実は北斎も描いています。

 

 

肉筆画帖より「塩鮭と白鼠」です。

塩鮭は内臓を取り除いて塩漬けにし、荒縄を頭部に巻いて干して乾燥させます。

正月の贈答用に作られたものに、腹をすかせた白鼠がかじりにきています。

鮭の特徴的な顔、やせ細った白鼠、骨と赤身の写実的な描写が目につく作品といえるでしょう。

肉筆画帖は飯島虚心の『葛飾北斎伝』によると天保7年(1836)におきた飢饉の際に制作され、その売り上げをもって北斎は困窮から脱したとされています。

この絵はその画帖の最後に描かれており、たとえ僅かな肉といえど食し生き延びようという生への強い意志が感じられます。

今はwith新型コロナウイルスという時代です。

私も塩鮭を食べながら明日も1日頑張りたいと思います。

 

 

カテゴリー:学芸員のつぶやき

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