アッと驚く読本挿絵のアッと驚く作品背景2018年12月21日

こんにちは、学芸員のNです。
小布施は少し前に降雪があり、辺り一面が真っ白になりました。
『小布施の民俗』には「雁田山・高社山に三回雪が降ると、里へも近いうちに雪が降る」という言い伝えが記されています。
このような話は、小布施町周辺で広く知られているもので、今でも降雪の目安として参考にしている人が数多くいます。
では今年は言い伝えが当たったのか・・・。

個人的に数えた限りでは、3回目で里に雪が降りました。
そんな昔の人たちによる天気を知る知恵というものを、毎年考えながら過ごしています。

さて、脱線しましたが、今回はただ今開催中の「アッと驚く 読本挿絵の世界」より展示している作品『そののゆき』について、ちょっとお話をしてみましょう。



『そののゆき』は文化4年(1807)、江戸麹町の角丸屋甚助によって出版されました。
作者は曲亭馬琴、挿絵は葛飾北斎が担当し、前篇の5巻5冊が販売されたのですが、後篇はなぜか販売されることはありませんでした。
その理由について、『馬琴中編読本集成 第五巻』には、次のような経緯が記されています。

ある彫師が、生活が貧しいことを理由に馬琴に仕事の斡旋を依頼しました。
馬琴は『隅田川梅柳新書』の仕事を彫師に当てましたが、彫師はその時、すでに角丸屋から『そののゆき』の依頼を受けていました。
彫師は、彫刻料の高い『隅田川梅柳新書』を優先し、『そののゆき』の仕事は滞ってしまったため、依頼主である角丸屋は怒り、彫師と仕事を斡旋した馬琴の2人を町奉行に訴えてしまったのです。
馬琴にとって寝耳に水、現在でいう冤罪で訴えられたようなものです。

結局、馬琴は無罪放免、彫師に沙汰が下されたのですが、馬琴はこのことで激怒してしまい、角丸屋が非を詫び『そののゆき』の校正や後篇の執筆を依頼しましたが、全て断ったそうです。
しかし、作家としての矜持を持つ馬琴は、最終的に『そののゆき』前篇の出版だけは最後まで付き合い、後篇の執筆については一切首を縦に振らなかったそうです。

こうして曲亭馬琴著の『そののゆき』は未完に終わったのでした。
そして問題になった2作品が、共に北斎挿絵の本だったという不思議な話です。

馬琴・北斎のタッグ作品であるとともに、複雑な事情を抱えたアッと驚く『そののゆき』をこの機会にぜひご覧ください。

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