2023年9月2日(土)→11月12日(日)
2 September (Sat) - 12 November (Sun) 2023
概要Overview
葛飾北斎の「冨嶽三十六景」や歌川広重の「東海道五十三次之内」など、今日よく知られている「浮世絵」の多くは、販売用の商品として制作された作品です。その一方で、注文制作による、いわば私家版の木版作品が作られることもありました。「摺物」と呼ばれるそれらの作品は、正月や季節の節目に仲間内で配布され、あるいは、襲名披露や唄や踊りの発表会の告知のために制作されました。このような受注生産の木版作品にも注文者の依頼に応じて浮世絵師が筆をとっていたのです。
注文品のために生産数が限定される摺物は、今日では馴染みの薄い作品群かもしれません。しかしながら、商品としての採算を考慮せずに制作された摺物の中には、空摺や金銀摺のような高度な彫り・摺りの技術を用いた作品もあり、商品としての浮世絵版画とは一味違った魅力をそなえています。
葛飾北斎「洗い張り」
葛飾北斎「夢見る娘」
菱川宗理「宝船」
北斎は、その長い画業を通じて多くの摺物作品をのこしていますが、摺物の制作にとりわけ注力し、多数の作品を作ったのが「宗理」という画号を用いた時期です。画業の前半にあたるこの時期に、狂歌師との関係を深めた北斎は、彼らの歌に絵を添えた狂歌摺物を多数制作しています。錦絵や肉筆作品の影に隠れがちな摺物作品ですが、北斎の画業の中でも無視することの出来ない分野であることは間違い有りません。北斎館には、北斎やその弟子の作品を中心に摺物作品が収蔵されており、なかでも宗理時代の狂歌摺物がまとまって収蔵されていることが大きな特徴です。
本展では、これら館蔵作品を通して、知られざる摺物の魅力に迫ります。江戸の趣味人達が仲間内で楽しんだ、ひとひらの繊細な世界をどうぞお楽しみください。
魚屋北渓「能十五番 白鬚」
- English
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Surimono
Introduction
Most well-known ukiyo-e prints, such as those in Katsushika Hokusai’s Thirty-Six Views of Mount Fuji or Utagawa Hiroshige’s Fifty-Three Stations of the Tōkaidō Road, were produced commercially to be sold. Meanwhile, other woodblock prints were being produced as private editions. Known as surimono (literally “printed things”), these were distributed among groups of connoisseurs to mark the New Year or other seasonal juncture, to announce the adoption of a new name, or to publicize a song or dance recital. Ukiyo-e artists were commissioned to produce such made-to-order woodblock prints.
Produced in only limited numbers, surimono are perhaps less familiar to us today than prints from other genres. Nevertheless, because they were made without concern for commercial profit, many employed advanced carving or printing techniques such as blind embossing or printing with metallic pigments and have an appeal that sets them apart from commercial ukiyo-e prints.
Hokusai produced a relatively large number of surimono over the course of his long career as an artist but was especially focused on the form during the period when he used the art name Sōri. At that time, Hokusai deepened his relationships with writers of kyōka (short comic verse) and produced many kyōka surimono in which his artwork accompanied their poems. Although often hidden in the shadow of paintings and colorful nishiki-e prints, surimono are certainly a realm of Hokusai’s work that cannot be ignored. The collection of the Hokusai‑kan Museum includes numerous surimono by Hokusai and his students, many of which are kyōka surimono from Hokusai’s Sōri period.
This exhibition delves into the fascinating world of surimono by looking at some examples from our collection, and we hope you enjoy the glimpse into the private world of Edo circles of connoisseurship that these images provide.
観賞のポイントHighlights
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繊細な表現と描写
趣味人好みの繊細な描写や色で表現された摺物は、商品として作られた浮世絵とは一味違った魅力があります。
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狂歌と楽しむ
北斎の摺物には、狂歌師の歌に絵を添えた狂歌摺物が多く見られます。歌の内容を含めてお楽しみください。
イベントEvents
特別講演会江戸狂歌の楽しみかた
参加・投稿・摺物
- 開催日
- 9月17日(日)14:00〜
- 講師
- 小林ふみ子先生(法政大学文学部教授)
- 会場
- 北斎館 映像ホール
- 聴講
- 無料(要入館券)
- 定員
- 50人(予約不要、先着順)
【講師プロフィール】
法政大学文学部教授。東京大学大学院博士課程修了。博士(文学)。専門は大田南畝、江戸狂歌周辺の江戸文芸・文化。近著に『大田南畝 江戸に狂歌の花咲かす』(岩波書店 2014年)、『へんちくりん江戸挿絵本』(集英社インターナショナル、2019年)などがある。北斎関係では『別冊太陽 北斎決定版』(平凡社、2010年)を分担執筆している。
学芸員による
ギャラリートーク
第一回:9月23日(土・祝)14:00〜
第二回:10月7日(土)14:00〜
第三回:11月4日(土)14:00〜
参加無料、要入館券
信州小布施 北斎館The Hokusai-kan Museum
長野県上高井郡小布施町大字小布施485
485 Obuse, Obuse-machi, Kamitakai-gun, Nagano-ken 381-0201
TEL: 026-247-5206 FAX: 026-247-6188
開館時間/Hours |
午前9時~午後5時(ご入館は午後4時30分まで) |
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入館料/Admission |
大人1,000円/高校生500円/小中学生300円 |
駐車場/Parking |
北斎館駐車場(北斎館に隣接) |
アクセス/Access |
●電車ご利用の場合 ●車でお越しの場合 ●By train ●By car |