北斎館収蔵「祭屋台」大解剖⑥

東海道旅行

かつての渡し場の様子が
生き生きと描かれる

この絵は、川の渡し場の様子を描いたものです。

手前には茶屋が立ち、思い思いに休む人の姿があります。馬に乗る人や天秤棒を担ぐ人が、川岸へと向かいます。
そして二艘の舟が人や馬をのせ、岸を離れようとしています。

川の向こうの街道には旅人が行き交い、飛脚か駕篭かきでしょうか、走る人の姿もあります。
茅葺きの田舎家が立ち並ぶ集落も見えます。

のどかな風景から、かつての渡し場のありさまや、人々の旅の様子がよく伝わってきます。


上町祭屋台編

かつて北斎先生の絵は、西洋の芸術家たちに驚きとともに大きな影響を与えました。そして今また先生の絵は海をわたり、イギリスの大英博物館に展示され、かの地の人々を熱狂させています。

そのなかに、北斎館から出展された上町祭屋台の天井絵があります。今回は前号に続き、上町祭屋台を紹介しますが、まずはその天井絵をくわしく見ていきましょう。


逆巻く怒濤、イギリスへ

イギリス・ロンドンの大英博物館で8月13日まで北斎先生の展覧会「北斎|大波の彼方へ」が開催されています。

先生の晩年に焦点をあてたこの展覧会に、小布施の北斎館からは肉筆画13点が出展されています。

なかでも人々の注目を集めているのは、上町祭屋台の天井絵「男浪」「女浪」の二図でしょう。

追求し続けた波の描写

北斎先生は水の動き、特に大波の姿に強く惹かれ、長年にわたり、さまざまな作品に描いてきました。

その集大成が「冨嶽三十六景」の「神奈川沖浪裏」です。

大英博物館では、現存する約100点のうち3点を所蔵し、大変な人気があるといいます。

上町祭屋台の天井絵は、波の描写のさらなる追求のうえに描かれました。

くだける波頭の先端が、「神奈川沖浪裏」では爪のように描かれ、「男浪」「女浪」図ではC字形にデフォルメされて、やや丸みを帯びています。

 


金箔と極彩色で覆われた縁絵

天井絵の周囲には、12センチ幅の縁絵が金箔を地にして描かれています。

北斎先生が下絵を描き、高井鴻山が彩色したという裏書きがあります。

「男浪」図の縁絵には、美しい尾羽をもつ風鳥や孔雀のほか、犀や獅子といった霊獣が描かれています。

「女浪」図の縁絵には、リスやカササギといった小動物、牡丹や蘭の花、さらに天使のような羽のある人物が描かれています。



縁絵に注目!