冨嶽三十六景とエッフェル塔三十六景

北斎とアンリ・リヴィエール

「冨嶽三十六景とエッフェル塔三十六景」
平成24年4月27日(金)~7月3日(火)

【特別講演】
日時:平成24年4月29日(日) 午後2時~
会場:映像展示室
「北斎とアンリ・リヴィエール」
国際浮世絵学会常任理事 中右 瑛氏

日本浮世絵界の巨匠北斎「冨嶽三十六景」、
パリの浮世絵師アンリ・リヴィエール「エッフェル塔三十六景」
日本・フランスの版画芸術、夢の競演

日本の浮世絵が、世界の美術家に大きな衝撃を与えたことは、よく知られています。たとえば情熱的な絵で知られ、オランダの画家「炎の人」ゴッホの作品には、浮世絵の影響が色濃く出ています。今回、葛飾北斎の代表作「冨嶽三十六景」と、この作品に魅せられたパリの版画作家アンリ・リヴィエールが描いたリトグラフ「エッフェル塔三十六景」が、夢の競演を果たします。


北斎と「冨嶽三十六景」

冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏 北斎の代表作「冨嶽三十六景」は、大判錦絵で三六枚ですが、このほかに一〇枚の「裏冨士」と呼ばれる作品があり、全部で四六枚が「冨嶽三十六景」と言われています。この作品は、北斎が七十歳を過ぎ、「為一」を名乗った天保元(一八三〇)年から同四年にかけて制作したシリーズものです。各地から望む富士山の姿を、当時の江戸庶民の風俗(仕事・旅の様子・暮らしぶりなど)を織り交ぜて細かく描いています。また、その構図もダイナミックで、遠近法が絶妙な効果を生んでいます。

 シリーズの傑作、赤富士と呼ばれる「凱風快晴」や「山下白雨」は、朝焼け、雲や雷の自然現象をみごとに表現し、「神奈川沖浪裏」は、太平洋の荒波が砕ける様、大波に翻弄される舟など大胆な構図とともに、見る者を圧倒する迫力があります。ゴッホがこの絵を激賞したというほど、静と動の対比、また遠近法のすばらしさは群を抜いています。あるいは、丸い大樽を削る職人を手前に描き、その大樽の中に遠景で三角の富士山を描いた「尾州不二見原」など、どの作品にも北斎の非凡な才能を感じずにはおられません。


パリの浮世絵師アンリ・リヴィエール

アンリ・リヴィエール リヴィエール(一八六四年~一九五一)は、パリの版画家です。十九世紀末(日本は江戸時代末期)にフランス美術界は、日本の浮世絵に強い影響を受け、多くの画家たちが、いわゆる「ジャポニズム」ブームに乗った作品を描きました。リヴィエールも北斎や広重らの浮世絵に感動し、フランスの都市の光景や自然の風景に浮世絵の手法を展開してみせたのです。パリ第四回万国博覧会では、「版画およびリトグラフ」部門で金メダルを受賞するなど、才能あふれた版画家です。

 彼は、自然や都市の光景、また労働者や庶民の姿を克明に観察し、その生きる姿を木版画やリトグラフに描き出しています。彼は、自然と調和して息づく歴史あるパリの光景を好んで描きましたが、晩年になると、産業革命によってパリの町並みが変貌していくことに失望し、光、雲、雪や風などを感じるブルターニュ地方に転居し、自然の微妙な表情をとらえた、親しみのある世界をつくりあげていきました。


エッフェル塔三十六景とアンリ・リヴィエール

 エッフェル塔三十六景 パリのシンボル、エッフェル塔は、フランス革命百周年を記念し、パリ第四回万国博覧会にあわせて一八八九(明治二十二)年に建設されました。今日では「東京スカイツリー」が世界一高い塔になりましたが、当時、三一二・三メートルを誇るエッフェル塔が世界一高い塔でした。

 リヴィエールは、北斎の「冨嶽三十六景」に刺激を受け、さまざまな場所から見たエッフェル塔、あるいは建設中の塔に直接登り、それをリトグラフで制作しました。これが今回展覧する「エッフェル塔三十六景」です。三六枚の作品は、エッフェル塔が点景であったり、鉄骨が大きく描かれてはいますが、決して絵の主題ではありません。パリの街の日常風景やそこに暮らす人々、働く人々の姿が生き生きと描き出されています。エッフェル塔が、パリの街を静かに見つめているような感じを与えます。色彩も灰色や淡いオレンジ色が主体で、落ち着いたパリの雰囲気をかもしだしています。

リヴィエールの印章箱 「エッフェル塔三十六景」制作に当たって、リヴィエールは浮世絵の絵師・彫師・摺師といった分業制作に興味を示し、制作過程のすべてに立ち会い細かな指示を出したと言われています。

※リトグラフ 版画技法の一つ。石版画、平版ともいう。油が水をはじく性質を利用して、油性の絵の具で描いた部分にインクを乗せた版をプレス機で紙に圧着し、写しとる方法。

 

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